2009年12月17日

日本二十六聖人

日本二十六聖人(にほんにじゅうろくせいじん)とは慶長元年12月19日(グレゴリオ暦1597年2月5日)、豊臣秀吉の命令によって長崎で処刑された26人のカトリック信徒。日本でキリスト教の信仰を理由に最高権力者の指令による処刑が行われたのはこれが初めてであった。26人は後にカトリック教会によって聖人の列に加えられたため、彼らは「日本二十六聖人」と呼ばれることになった。二十六人のうち、日本人は二十名、スペイン人が四名、メキシコ人、ポルトガル人がそれぞれ一名であり、すべて男性であった。この出来事を「二十六聖人の殉教」という。祭日は2月5日。

当時は、キリシタン大名やキリシタンによって、寺社が焼かれたり僧侶が迫害されたり、逆に仏教を厚く信仰する大名の元ではキリシタンが迫害される事件が相次いでいた。さらに宣教師や商人によって日本人が奴隷として海外に売られる事件が発生し、ここに至って豊臣秀吉はバテレン追放令を発布した。ただし、秀吉は南蛮貿易の実利を重視していたため、この時点では大規模な迫害は行われなかった。黙認という形ではあったが宣教師たちは日本で活動を続けることができたし、キリシタンとなった日本人が公に棄教を迫られる事はなかった。

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しかし、1596年10月のサン=フェリペ号事件をきっかけに、秀吉は1596年12月8日に再び禁教令を公布した。また、フランシスコ会の活発な活動が禁教令に対して挑発的であると考え、京都奉行の石田三成に命じて、京都に住むフランシスコ会員とキリスト教徒全員を捕縛して処刑するよう命じた。ちなみに、二十六聖人のうち、フランシスコ会会員とされているのは、スペインのアルカンタラのペテロが改革を起こした「アルカンタラ派」の会員達であった。大阪と京都でフランシスコ会員7名と信徒14名、イエズス会関係者3名の合計24名が捕縛された。三成はパウロ三木を含むイエズス会関係者を除外しようとしたが、果たせなかった。

24名は、京都・堀川通り一条戻り橋で左の耳たぶを切り落とされて(秀吉の命令では耳と鼻を削ぐように言われていた)、市中引き回しとなった。

2009年12月01日

日本の捕鯨が、鯨食文化のない地域から

日本の捕鯨が、鯨食文化のない地域から問題視されるのと同様、しばしば、犬肉料理文化を持たない国から問題視されることがあり、韓国では、1988年のソウルオリンピック開催に際して、欧米諸国の批判をかわす為、犬食に対する取締りが行われたが、犬肉料理を愛好する人も少なくない為に大通りから遠ざけられて黙認された。2002年のFIFAワールドカップの際には、FIFAが「犬肉を追放してほしい」と韓国政府に要請してきたが、FIFAの副会長でもあるチョン・モンジュン氏は拒否した。2008年4月にはソウル市当局が正式に犬を嫌悪食品とする禁止令を撤廃し、食用家畜に分類する発表を行った。これに対し韓国国内の動物愛護団体が反発を強めている。

韓国における犬食は、今なおきわめて盛んである。2006年、韓国国務調整室が行なった調査によると年間200万頭の犬が食べられている。2008年の調査によると、ソウル市内だけで530店の食堂が犬食を扱っている。違法のため、当局による衛生管理が行なわれておらず社会問題化している。
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北朝鮮においては、食糧難の中、数少ない蛋白源として珍重されている。平壌観光のガイドブックには「朝鮮甘肉店」と記載され紹介されており、案内員に希望すれば朝鮮甘肉店へ連れて行ってもらうことも可能である。なお欧米の批判の影響を受けにくいこともあってか、平壌甘肉店は大通りに面した場所にある。犬は残飯を与えても育つので、家庭で小遣い稼ぎに飼われることがあり、中でも結婚資金を稼ぐために数頭の犬を飼う若い女性を「犬のお母さん」と呼ぶ。育った犬は自由市場で売買される。
日本では、縄文時代に集落遺跡などの土坑底部から犬の全身骨格が出土する例があり、これを埋葬と解釈し、縄文時代の犬(縄文犬)は、狩猟犬として飼育され、死後は丁重に埋葬されたとする説が一般的になっていた。

2009年11月27日

軍事技術

敵艦を探知するために開発されたソナーの軍事技術がある。

同一周波数によるパルス状の信号の他に、素早く周波数を変化させて広い周波数帯に渡る反射信号を得ることで短時間に多様な情報を得る「スウィープ」も使用される。

高周波と低周波の数字的定義はあいまいであるが、アクティブ・ソナーにおける低周波は、高出力(約100KW以上)の3KHz以下が低周波とされる。この周波数以下であると、CZ(Convergence Zone、収束帯)域(約33海里)付近の遠距離探知が可能となり、敵潜水艦の行動を大きく制限することができるといわれる。

レイヤーデプス
サーモクラインとも呼ばれる海中の温度境界層の深さ。サーモクラインは水深200mまでの深さで発生し、季節変動や、気温の日較差でも発生深度に変化が見られる。気温の日較差は、正午頃に海面温度が急上昇することにより顕著な温度境界が生じ、浅深度で発信するアクティブ・ソナーの探知能力が極端に低下してしまう。この現象は「アフタヌーンエフェクト」(午後の効果)とよばれているアクティブ・ソナー独特の特性である。潜水艦はこの温度境界層下200ftで艦艇襲撃の機会を伺っている。温度境界層には内部波が存在し、最大波長数10km、波高数10mから最大100m、周期は数分から4-5日。発生メカニズムは潮汐と海底地形の相互作用や大気中の風の変動など。音波伝播路を不規則に歪ませる作用を持つ。
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BDR(ベスト デプス レンジ)
LD下200ftに潜む潜水艦を探知できる距離。LDの深度により変化する。
CZ(コンバージェンス ゾーン)
水深5,000m以上の海域において発生する音波の遠距離伝播現象。

2009年11月13日

教会旋法と大衆音楽

元来、教会旋法として用いられていた際には、特にパイプオルガンなどの、音域の広い楽器を用いていたために、それぞれの旋法の1度の音は、現在の「移動ド」に近い形態であった。(当初は、和音などといった概念がほとんどなかった)。荒っぽくかつ単純に述べるなら、ある1オクターブ内に存在する白鍵だけを、それぞれ順に1度=基音として、個々の白鍵から1オクターブ=8度までの白鍵の音(8度の音は、1度の1オクターブ高い音。)を一単位として、順に7種類弾いたものがそれぞれ、ここで述べる、「音階」に分類される2つも含めた、ごく狭義でいう「7つのモード」の、元々の正体といってよい。
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しかし、当初の教会旋法はそれに加えて、いくつかの他の旋法も存在し、楽曲の始まりと最後の音の限定、上行と下行の際に音の配列が変化するなど、モード(旋法)ごとに、細かく厳密な規則も存在した。(教会旋法。) 大衆音楽に頻繁に用いられるようになった段階では、細かい規則は排除され、固定ドでの1オクターブの内の音の配列となり、基本的に基音が固定されることによって、当然ながら、それぞれのモードにおいて、途中の音の配列や個々の音の半音・全音の関係などが変化することとなる。またその結果、現在の各モードを、パイプオルガンにかかわらず、他の鍵盤楽器(キーボード)で弾くと、Major Scaleであるアイオニアン以外は、その音列すべての1音~5音の間で、黒鍵の音が含まれることとなる。 よって、研究段階では、「教会旋法」のシステムが参考にされて取り入れられたが、実用面での各「モード」は、「教会旋法」が自然に変化したものでも、直接関連したものでもないとする主張も多い。

2009年11月02日

道路

道路(どうろ)とは、歩行者、自動車などが通行するために設けられた通路である。

日本の法律上は道路法上の道路と、建築基準法上の道路がある。道路法の「道路」は公道であり、道路構造令による幅員・構造などの基準が定められている。建築基準法上の「道路」は公道以外に位置指定道路(私道参照)なども含む。それ以外のものは法律上は「道路」とは位置づけられず、「道」などと呼ばれる。

一定の線形と幅員を有し、表層・基層・路盤などの舗装体と、それらを支える路床とからなる。また、道路と一体となって利用される橋やトンネル、横断歩道橋や横断地下歩道などの施設も含む。最も基本的な交通施設であり、自動車交通の発達に伴い近代化された。
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英語の Street は都市部の道路(街路)を意味する単語である。Roadは都市と都市を結ぶ道路を意味する。

狩猟採取を行なっていた原始社会では、動物の移動にともなってできるけもの道が狩猟民らによって利用される場合もあったが、もっとも原初的な道は「踏み分け道」である。人類が農耕を始めて集団で定住し、そうした集落間で交易や婚姻などが行なわれるようになると人の往来が頻繁になり、そのため、歩きやすく、安全で、しかもなるべく最短距離となる経路が選択され、多くの人が歩いたので、草木がかき分けられ踏み分けられて自然発生的に道ができたと考えられる。現代においても、人の往来が多い2点の芝生が禿げる等して、その発生を観察することが出来る。

2009年10月23日

新株発行

会社設立後、新たに株式を発行して資金を調達することを、新株発行という(実務では「増資」ともいう)。

新株発行の方法には、誰に株式を割り当てるかによって、(1)既存株主に、持株数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を与える株主割当て、(2)既存株主を含め、一般に引受人を募集する公募、(3)特定の第三者に株式を割り当てる第三者割当ての3種類ある。第三者割当増資は、資金調達のためよりも、業務提携や企業買収、又は買収対抗策などの手段として用いられることが多い。

株主割当ての場合は、既存株主の持株比率も、株式の経済的価値も影響を受けないが、公募又は第三者割当ての場合には、次の2点で株式の希薄化 が起こり、既存株主の不利益となる可能性がある。
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持株比率の低下
株主割当て以外の新株発行では、既存株主は、自ら割当てを受けない限り持株比率が低下する。特に人的つながりの強い閉鎖会社では、持株比率が株主自身の役員としての地位と結び付いている場合が多く、不利益が大きい上、市場で株式を取得して持株比率を維持することもできないため、持株比率の保護は重要な意味を持つ。
有利発行による経済的価値の希釈
株主割当ての場合は、新株の発行価格がいくらであっても既存株主の経済的利益には影響がないが、株主割当て以外の場合は、株式の本来の価値よりも低い価額で新株が発行されると(有利発行)、1株当たりの経済的価値が下落し、既存株主の不利益となる。

2009年06月22日

電子投票(でんしとうひょう)とは

電子投票(でんしとうひょう)とは、票を入れる行為を電子化した投票(方式)のこと、あるいはそのような投票を行うことをいう。投票所における投票で電子機器を用いて行う投票のほか、インターネットなどのネットワークを介しての投票などが含まれる。

電子投票といわれるものには以下のようなものがある。

投票所でマークシートやパンチカードを用いて投票する方法(集計における電子投票)
投票所で電子機器の「タッチパネル」や「押しボタン」を押して投票する方法(投票行為に関する電子投票)
インターネットを用いて遠隔地から投票する方法(ネットワークを利用する電子投票)
また、投票がなされる対象に着目して、公職に関わる選挙、株主総会など法律に沿った決議、私的団体における内部規律方法としての決議、その他のアンケートなどに分類できる。それぞれ、記名投票であるかどうか、投票者が限定されているかどうかなどに違いがある。

現在、日本の公職選挙で用いられることがある電子投票は、上記の投票行為における電子投票だけであり、条例を定めた地方選挙において採用する例がある。これを規律する関連法規は、いわゆる電子投票法である。

日本における株主総会での議決権行使については、2002年の商法改正により、インターネットを利用した投票ができる。
ハンドボール
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生態系

利点 [編集]
開票が迅速化し、選挙結果を迅速かつ正確に知ることができる
投票用紙など、紙資源の消費を減らせる

欠点 [編集]
レンタル費用、導入コストなどが紙の投票に比べ高額
機器の安定性に不安がある。
多数の候補者がいる場合、一画面に表示できず、有利、不利が生じる。

安全性 [編集]
ここでは暗号理論における安全性について書く。

安全性の定義 [編集]
2つの要件を満たす事が数学的に保証されているとき、電子投票方式は安全であるという:

(Anonymity) どの投票者が誰に投票したのかは誰にも分からない。
(Public Verifiability) 投票結果が正しく集計された事が、集計後いつでも誰でも確認できる。
さらに加えて次の性質が要求される事もある:

(Reciept Freeness) 自分がどの候補に投票したのかを投票後他人に証明する事はできない。
投票者が棄権したのかそれとも投票したのかは投票者当人以外には誰にも分からない。
Reciept Freenessから、他人が自分の投票内容を強制する事はできない、という性質が従う(たとえ強制したとしても、本当に強制された通りに投票したのかを確認する方法がないため)。ただし投票時に監視すれば投票内容を強制する事ができる。

「電子投票では棄権したのかどうかを隠す事はできない」、「電子投票では不在者投票が難しい」と解説したものがあるがこれは誤りである。すでにそのような方法は複数提案されている。

2009年06月05日

宇都宮氏庶流(豊前、筑後、伊予)

宇都宮庶流としては藤原宗円の次子である中原宗房が豊前国仲津郡城井郷に地頭職として赴任したことが豊前宇都宮氏の始まりといわれる。その子、宇都宮信房は豊前守に任じられて九州豊前国に下り、一時期は築城郡の本城城を拠点として、宇佐、筑城、下毛、仲津、田川など各郡に庶家を配し、その子の宇都宮景房は九州平定の功により、景房の子の宇都宮信景は源頼朝から、幕府評定衆、九州四奉行に任じられ、九州の武士を統括したこともあった。豊前宇都宮氏7代宇都宮冬綱(城井冬綱)が城井氏の祖となる。
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また宇都宮庶流としては、筑後国に勢威を張った筑後宇都宮氏が知られる。宇都宮氏第8代(宇都宮朝綱を初代とすれば第6代)当主宇都宮貞綱(元寇の時に討伐軍総大将)とともに九州に同行し、筑後国山門郡大木を拠点とした貞綱の弟である宇都宮泰宗の子孫が直接の始祖である。すなわち、泰宗の子の宇都宮貞泰は、南北朝時代に四国伊予国に勢力を保ち、南朝の懐良親王と共に城井氏の拠点の豊前国仲津に移ったが、北朝方の豊前宇都宮氏に対して、南朝方で肥後国八代に移った宇都宮貞泰の次男の宇都宮貞久が始まりとされる。この貞久の孫の宇都宮久憲が筑後十五城筆頭の宇都宮氏系蒲池氏の祖となる。

また、四国伊予国の伊予宇都宮氏は伊予守に任じられた宇都宮豊房が始祖である。豊房は豊前宇都宮氏7代となった宇都宮冬綱(城井冬綱)の弟であった。ちなみに、冬綱は宇都宮氏第9代当主宇都宮公綱の弟である。豊房には子がなく、宇都宮貞泰の四男の宇都宮宗泰が継ぐ。

2009年05月02日

伝説(でんせつ)

伝説(でんせつ)とは、様々な地方で語り伝えられた民話のひとつ。特に、語り手によって「事実を伝えるもの」として語り継がれたものを言うが、その内容が本当に真実であるかどうかは問わない。一般的に、地名や遺跡などの由緒を語るものが多い。

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口承文芸は無文字時代から存在し、一般に、昔話・伝説・世間話などの民話、新語作成、新文句(新句法)、諺、謎、唱え言、童言葉、民謡、語り物などに分類される。

このうち、昔話には、発端句(「むかし」を含むものが多い)と結句(「どっとはらい」など)に代表される決まり文句がある。また、固有名詞を示さず、描写も最小限度にとどめ、話の信憑性に関する責任を回避した形で語られる。時代や場所をはっきり示さず、登場人物の名前も「爺」「婆」や、出生・身体の特徴をもとにした普通名詞的である。「桃太郎」は、「桃から生まれた長男」の意味しか持たない。

伝説は、同じ昔の話であっても、一定の土地の地名や年代など、その所在や時代背景が具体的に示され、登場人物も歴史上の有名な人物やその土地の何と言う人物など、好んで詳細に示そうとし、定義において昔話との大きな相違点とされる。 これらの事から、伝説には伝記風の態度と要素があるが、昔話はフィクション(創作)として語られている。しかし一部の土地では「炭焼き長者」や「子育て幽霊」などといった昔話が伝説化し、定着している例も挙げられる。

2009年04月18日

灌漑(かんがい)

灌漑(かんがい)とは農地に外部から人工的に水を供給すること。

技術的には、作物・土壌・水の間に適切で有機的な関係を保証する農学的側面、各種の施設・機器を用いて耕地に水を供給し管理する狭義の灌漑技術、水源から水を引く土木工学的側面などがある。農地に対する水管理という点で排水(農地排水)とセットで灌漑排水として扱われることが多い。

また大きなくくりとして畑に水を供給する畑地灌漑と水田に水を供給する水田灌漑に分けられる。また、耕地内で作物に給水することや圃場内で植物に給水することは灌水もしくは水遣りという。
この灌漑が社会発展に果たす役割は非常に大きい。灌漑により、農地の生産性は著しく高まるために、余剰生産物が発生する。余剰生産物は、農業以外で価値を生み出す職業を支え、商工業者や軍隊、王権貴族の生活を支える。このように、灌漑による生産性向上は社会に変革をもたらす。

その反面、乾燥地での不適切な方法による灌漑は、土壌の塩類集積などをもたらし、農地を荒廃させる。これはメソポタミア地方でしばしば文明の衰退をもたらしたし、アスワン・ハイ・ダムの建設によってエジプトでも深刻化しつつある。ソ連によるアラル海の水源であるアムダリヤ川(アム川)とシルダリヤ川(シル川)からの綿花栽培用の灌漑用水の強引な取水は、アラル海を著しく縮小させ、漁業を壊滅させた上、不毛の砂漠地帯を作り出してしまった。インドにおいても、灌漑技術の導入により劇的に農業生産物が増加する「緑の革命」がもたらされたが、近年になって地下から汲み上げられた塩類が、深刻な農業被害を引き起こしているという。

灌漑の歴史
農耕の開始によって人口が増加し、国家が形成されるようになると、国家を統治する政権は自らの権威を示し、正当化するためにピラミッド(墳墓)や古墳などの大土木事業を行うようになる。しかし、次第に政権が安定してくると国家の繁栄を目指した公共事業が行われ始める。

国家を維持するための居住地と人口を支えるためには多くの食料と飲料水が必要になる。そのため、治水問題と灌漑問題の解決が重要になる。治水問題では洪水などによる水害を防ぐための築堤などの河川整備が、灌漑問題では水源確保のためのため池、堰堤やダムの建設と水源から目的地までの用水路の建設などの農地整備が相互に関連しながら行われてきた。

エジプト
古代エジプトにおいては麦類を中心とした畑作農業が行われており、紀元前3500年ごろに灌漑が始まっていたと考えられている。その灌漑はナイル川の氾濫を利用した畑作灌漑であった。青ナイル川から流れ込む春季の多量の雨水によってナイル川下流では夏季にはゆっくりと水位が増水し、氾濫を起こす。この氾濫は日本で見られるような濁流で家々を押し流すような氾濫ではなく、ゆっくりと次第にナイルの水が堤防を超え外部に漏れ出るような様子の氾濫である。

この氾濫を耕地に誘導することによって耕地の土壌中に十分な水分が保水されるという湛水灌漑であった。また、ナイルの氾濫水は上流の肥沃な土壌を含んだ泥水で、氾濫によって肥沃な表土が供給された。このため、湛水することによって十分な水が供給されることと流水によって肥沃な表土が運搬されてくることが定期的にあったため乾燥地にもかかわらず塩類集積が起こりにくかったと考えられている。

メソポタミア
新石器時代以降メソポタミア北部の山麓の傾斜地で天水依存の農業(天水農業)が行なわれていたとされる。しかし、紀元前3000年ごろ、気候の変化によって水源を求めてチグリス・ユーフラテス河の下流平地部へと移住した。

しかし下流の平地部は、上流の山岳地帯での春の雪解け水に起因する、突然の洪水や河川氾濫に見舞われる氾濫原であった。そのため、溢流を制御し、溢流した河川水を蓄えるため池を作り、各耕地に配分する用水路を作る公共事業を行なうことが都市国家の宿命であった。ただし、この水は飲料水等の生活用水にも使用された。

この地域は降水量は少ないものの温暖なため、用水が確保されれば驚くべき収量を上げることが出来た。

この灌漑も氾濫水を使用する灌漑であるが、貯水池(ため池)を作り水路で配分する点がエジプトと異なる。そして、ため池や用水路などの農業生産基盤は農地と共にしばしば収奪の対象とされ、騒乱のたびに灌漑排水システムは荒廃、そして再建された。その管理の不安定さが耕地の塩類集積を招き、生産力が低下し、文明が衰退して行った。
ウリヤ きくすい ルーン はに丸 フィッシン サディ ビアガー ジャック コスプリ ワニス 深海 トリオ パンパン ボート レーター しじゅう オフロード シーン ドラム ナミビア やちょ アカペラ セミプロ レガッタ ロヤジル トルソ フフホト ケモカイン リンリン メシマ ニュー ビュス プロテクト テーブル シャレー コリオン 四季の綱 トメント フォロー オマージュ ゲート パセリ フォーク ナーダム おきな シート しょうわ サック ティペット ジョンツ

ヨーロッパ
ヨーロッパの気候は降水量が少なく、畑作には灌漑が不可欠であった。メソポタミア地方から農業が伝播したが、それは灌漑を必要とし、著しく水源等の地理的条件に左右された。しかし、ヨーロッパでは灌漑を駆使して農業生産力を上げるのではない別の方法をとることになる。

それはローマ時代にローマ帝国領内で起こった、耕地を二つに分け半分を耕作、半分を休閑地とする二圃式農業によるドライ・ファーミングであった。休閑地は一年かけて降水を土壌中に保水し、翌年の耕作に使用するというものだった。これによって、灌漑農業よりは単位当りの収量は低下するものの場所的制約から解き放たれ、耕地面積が飛躍的に増加し、農業生産力は大きく向上した。

中国
中国は黄河・揚子江などの大河が多いものの、内陸部は乾燥地帯が広がり、大河川は氾濫が頻発するなど問題を抱えていた。隋の大運河建設以後、治水・灌漑・水運を一体化して考える水学(すいがく)が発達した。特に北宋以後は増大する人口と食料生産・輸送の観点からさまざまな灌漑・治水方策が提案された。

日本
日本の灌漑は稲作(水田)の伝播とともに拡大し、大和時代の頃にはため池や配水路など計画的な用水施設の設置が行われている。新田の開発と灌漑施設の設置は表裏一体であり、農業土木技術が進歩するにつれて灌漑施設も大規模なものへ変遷した。江戸時代には見沼代用水などを始め、各地で長距離の農業用水路が開発されている。第二次世界大戦後には、治水などとの目的にも合わせた多目的ダムの建設も進み、全農地の2/3が公共事業により建設された農業用水の恩恵を受ける状況となっている。

米国
センターピボットなどの大型灌漑により、世界の穀物倉となった。

灌漑施設の遺跡(一部)
エジプト
メソポタミア
メキシコ
アンコールワット
都江堰(中国)

灌漑方式
灌漑はその目的、水源、方法による分類がある。ここに示すのは方法による分類である。

畑地灌漑
スプリンクラー灌漑
多孔管灌漑
点滴灌漑
地表灌漑(間断灌漑を含む)
地下灌漑
肥培灌漑
水田灌漑
湛水灌漑
間断灌漑
田越し灌漑
掛け流し灌漑
主要な灌漑方式 主な灌漑方式の概要と得失を記す。詳細は沙漠緑化の技術参照

地表灌漑
最も古くからある灌漑方法。灌漑水路から一定周期で畑地に冠水する。作物に吸収されずに灌漑水路面と耕地表面で無駄に蒸発する灌漑用水ロスが最も大きく、塩害も起こしやすい。20世紀に入ってダムが造られ大規模に行われるようになった。 
スプリンクラー灌漑
20世紀に入って米国のセンターピボットなど電動ポンプによる地下水汲み上げと散水設備による灌漑が行われるようになった。
点滴灌漑に比べ設備投資資金が少なくてすみ、設備のメンテナンスも簡易であるが、灌漑用水は点滴灌漑の5倍消費する。
点滴灌漑
1960年代にイスラエルで開発された。スプリンクラ灌漑に比べ所要水量が1/5で済むかわり設備投資が大きく、設備メンテナンスに金がかかり、末端の管系の寿命が限られている。

最近の灌漑技術
土中水分計による点滴灌漑の電子制御(土中水分量の最適化制御)
下記の各方式の水分計によって土中水分を設定値に保つように放水する。単なる点滴灌漑の場合、根の水平展開に応じた水分の水平展開を得にくく、垂直に長い水分布となって水利用効率が悪いのみならず毛細管現象による塩害の可能性もあるため、スプレーヘッドを併用して水平散布したり、透水チューブを用いる場合もある。給水量の節約と垂直浸透を避けるためパルス送給水する装置も開発されたが高価で維持費もかかるので1リッター/hrなどの超低速送給水も研究されている。灌漑
砂地における感圧制御点滴灌漑
多段式吸引圧水頭計
複数の深度で吸水圧水頭を計測するセンサー。施肥状態や温度誤差が小さく、植物が吸水するのに必要なエネルギーを計測でき、土中の水の移動を三次元計測できる。
テンシオメーター
単一深度で吸水圧水頭を計測するセンサー。施肥状態や温度誤差が小さく、植物が吸水するのに必要なエネルギーを計測できる。また従来はpF2.8以上の乾燥土壌は計測できなかったが最近、乾燥土壌が計測できるように改良された。乾燥土壌用テンシオメーター。但し電子制御に向かず、垂直方向の土中の水移動が計測できない。
誘電率水分計
土壌の誘電率によって土中の体積含水率を計測する。乾燥土壌でも計測でき電子制御に向き安価。しかし、施肥状態や温度誤差がでるのと、体積含水率が同じでも土壌や耕起の有無で根が吸水に要するエネルギーが違う、などの問題がありテンシオメーターなどで計測して、誘電率水分計との差異を求め、温度・土壌補正パラメーターを設定せねば、精度の確保が難しい。